魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


そう告げると、竹倉さんは書類をまとめて立ち上がり、応接室から去って行った。
木堀さんがその後を引き継ぐように会釈をする。


「草下様、佐藤様。こちらです」

「……あー、と。その呼び方、やめませんか」


歩き出した木堀さんに、草下さんが歯切れ悪く言う。


「はい……?」

「もう俺ら客人じゃないですし、むしろ木堀さんたちの方が先輩なんで。様とかいらないっていうか」


確かに。
追随するように私も彼の隣で何度も頷いていると、木堀さんが照れ臭そうに微笑んだ。


「そ、そうですよね。私、使用人の中で一番下っ端なもので……先輩と言われてしまうと、何だか恥ずかしいです」


眉尻を下げて少し嬉しそうに話す彼女の、なんと可愛らしいこと。
木堀さんは一体何歳なんだろう? 私たちとさほど変わらないようにも見えるけれど。


「では、草下さんと佐藤さん。行きましょう」


張り切った様子で再び歩き出した彼女を見て、まあそれはいつか機会ができた時にでも聞いてみよう、と思い直した。

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