魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


ようやく落ち着いたところで、先程から気になっていたことを尋ねる。
パーティーなのだから、ドレスで参加するのが普通だ。というより、それ以外考えられない。

彼女は眉尻を下げると、はにかむように微笑んだ。


「このような場はやはり、得意ではなくて……ですが、蓮様にお誘いいただけたのが嬉しかったんです。だから、行きたい、行かなきゃと……思って」


それから、白い頬がほんのりと色づく。


「私はいつでも、蓮様の専属執事ですから。どこへでもお供しますよ」


ああ、君は眩しい笑顔で、なんて残酷なことを言うんだろう。
繋ぎ止めておく方法も、手放す方法も同じ、だなんて。本当に、これほど皮肉なこともない。

どうして対等にさせてくれないの。どうして君はいつも、半歩後ろを歩くの。


「蓮様……!?」


彼女の手を取る。そのまま会場を出て走った。
外に出たところで、一台の車が行く手を阻むように目の前に停車し、運転手らしき男性が降りてくる。


「あれ? 話が違うんだけど。何で蓮くんも一緒なのかな」

「茜さん……!」


久しぶりに見た長髪のモデルは、僕を一瞥して首を傾げる。しかし次の瞬間には彼女の方に視線を向け、明快に告げた。


「約束通り迎えに来たよ。百合」

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