魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


中からそんな声が聞こえて、顔を上げる。――息を呑んだ。

この部屋はウォークインクローゼットのような役割を担っているのか、実に色とりどりのドレスが身を寄せ合っている。

そんな空間の中、一際目を惹くのがピンクのフリルドレスだ。いや、正確に言うと、ドレスに目を奪われたわけではなかったけれど。


「君は……」


目の前に佇む可憐な少女。その形の良いピンクの唇が動いて、声を発する。
私をじっと見つめる瞳は、ヨーロッパの海のように澄んだ深い青色を宿していた。

なんて綺麗で儚いんだろう。
彼女の腰まであるブロンドの髪。艶やかなのに柔らかそうで、触れたら消えてしまうんじゃないだろうか。

心音が高鳴る。こんなに美しい人、見たことない。


「お初にお目にかかります」


数歩距離を詰め、それから跪く。
そうしろと言われたわけじゃない。自分でも、どうしてか分からない。それなのに。


「私、本日より五宮家にお世話になります。佐藤と申します」


この人に仕えたい――そう、強く願ってしまった。
まるで魔法だ。人の心を捕らえて離さないみたいに、この人には不思議な引力があるような気がして。

彼女こそ、最高の「お嬢様」だ。


「早速ですが、」

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