魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


心臓を落ち着かせるように、自身の胸に手を当てる。
すう、と息を深く吸って、私は一思いに告げた。


「――私にお化粧をさせて頂けませんか?」

「………………は?」


たっぷり十秒は沈黙が続いただろう。意味が分からない、といったように眉根を寄せる彼女に、私は立ち上がる。


「せっかく素敵なドレスをお召しになるのですから、お化粧した方が絶対に映えますよ。お嬢様ほど綺麗な方ですと、そのままでも十分お美しいですが」

「何を、言って……」

「わあ! ドレッサーもあるんですね!」


丁寧に使用された痕跡のある、数々のメイク道具。周りには煌びやかなドレス、そして最高にして最強の逸材。
こんなの、またとないチャンスだ。どうしよう、わくわくする!


「さあお嬢様、こちらへどうぞ」

「い、いや……」

「大丈夫です! 私、お化粧の腕には自信ありますから!」


あまり乗り気ではない彼女の背中を押して、ドレッサーの前へ。
諦めたのか渋々腰を下ろした彼女に、私は早速取り掛かった。

まずはスキンケアから。しっかり保湿をして、メイクのノリを良くしていく。


「お肌すべすべですね~! 真っ白でふわふわで……どんな色でも似合いそうです」

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