魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
あまり普段からメイクはしないのだろうか。私が肌に触れる度、彼女はくすぐったそうに鏡の向こうで目を細めた。
スキンケアが終われば、次はベースメイク。
彼女の肌は何もつけていなくても陶器のようだけれど、色素沈着を防ぐためにも下地やファンデーションは大切だ。
「何かご希望はございますか? ドレスに合わせてピンクメイクにしようと思うのですが……」
肌の白さが引き立つようにビビットなピンクを目尻に入れるのも可愛いし、儚い雰囲気を壊さないナチュラルな仕上がりも捨てがたい。
彼女は私の言葉に緩く首を振り、「分からない」と言った。
「こういうの、全然分からないから」
「左様でございますか……」
見かけによらず少しハスキーな声。
木堀さんがザ・女の子といった声だったので、その対照的な声にいささか驚いた。
「ではナチュラルメイクにいたしましょう。きっとお似合いですよ」
アイシャドウはコーラルがかった薄ピンクをベースに、何度か少しずつ重ねて自然な血色感を演出する。細いブラシで目尻に引いたアイシャドウは、アイラインの代わりだ。
まつ毛をビューラーでくるりと上に向かせ、マスカラを丁寧に塗っていく。
頬にほんのりとチークを乗せて、潤い重視のリップを唇に塗れば――
「できました!」