魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
それまでずっと目を瞑っていた彼女の肩を、優しくたたいて声を掛ける。
「もう目を開けて大丈夫です。終わりましたよ」
私が言い終わった直後、彼女の瞼がゆっくりと開いていった。
長くてふさふさのまつ毛と、ぱっちり二重。瞬きするたびにコーラルピンクがちらちらと顔を出し、ラメが光る。
「……すごい」
ぽつりと、彼女が呆けたように呟いた。
鏡を凝視したまま、ひたすら自身の変化に驚いているようだ。
「お嬢様は元々可愛らしいので、あまり手を加えていないんですよ。本当に、ちょっと色味を足しただけです」
嘘じゃない。そもそもが整いすぎていて、こちらとしてはメイクし足りないくらいだ。
きらきらしたもの、可愛いもの、綺麗なもの。昔から見るのが好きだった。
それはメイクも例外ではなく、しかし家では「化粧なんてまだ早い」と封じられてきたのだ。
どうして? 可愛くなりたいだけなのに。綺麗になろうと努力するのは、いけないこと?
誰にも見つからないように、こっそり雑誌を読んだりメイク道具を買ったり、そんな窮屈な世界に嫌気がさして。
自分が駄目ならせめて、誰かに施したい。誰かを着飾りたい。そう思うようになった。
「……君は、魔法使いみたいだね」