魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
その声に咎められた瞬間、弾かれたように振り返る。
最後だから、という決意だけで目を逸らさないように踏ん張って、彼を見つめ返した。
「君はクビだって、言ったはずだけど」
「……はい」
「早く出て行って」
端的な言葉のカードが、ぐさぐさと心臓を抉る。本当に私はクビなんだな、と今になってようやく実感がわいてきた。
「蓮様。なぜクビなのか、理由を教えていただけますか?」
努めて明るく、努めて冷静に。そうでないと、気持ちが揺らいでしまう。
彼の顔を見てしまったら、段々と未練がましい想いが膨らんでくる。
「……気が利かないから」
「嘘です。私、蓮様に気が利かなくて怒られたこと、一度もありません」
「鈍くさいし、危ないから」
「それも嘘です。だとしたらとっくのとうにクビになってます」
本当は、理由なんてどうでもいい。ただ一つ、彼の口から聞きたいのは――
「君のことが嫌いになったから。だから、クビにした」
ああ、全く、なんて人。こんな時に欲しい言葉をくれなくていい。
でも良かった。嫌い、と彼の口から聞けて。これで私は心置きなく去ることができる。
「……左様ですか。分かりました」