魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
そう問いかけながらも、俺自身、どうしていいのかなんて分かるわけもない。
あいつが来てから、蓮様はその瞳に生気が宿った。あいつもまた、蓮様に敬愛以上の気持ちを抱いていたことは言うまでもないだろう。
簡単なことだ。二人が手を重ねればいいだけの話で、しかしそれを可能にする状況がないだけの話で。
金も、地位も、自由も。全部ひっくるめて平和に解決する都合のいいことなんて、そうそう見つからないから夢は夢のままなのだ。
「どうもこうも、……これに関しては、五宮家のことだからな」
だから俺たちにはどうしようもない。そういうわけだ。まあそうだよな、としか思えない。
ばかばかしくて陳腐な世の中だ。窮屈で満足に息もできやしない。
「ほんと、家柄なんて糞くらえだわ」
今日はまだ煙草を吸っていないから余計に苛々している。
つい口走ってしまった暴言に、これはさすがに怒られるか、と隣を見やった。
「……ああ」
竹倉は短く肯定して、目を伏せる。
「糞くらえ、だな」
どうやら彼も、虫の居所が悪いらしい。
果たして同情か後悔か憂鬱か。その分別は曖昧なまま、しばらく俺たちは窓辺で佇んでいた。