魔法をかけて、僕のシークレット・リリー

突然抽象的な話題になり、頭が混乱した。しかしそれは単なる導入にすぎなかったようで、母は本題を導く。


「百合が卒業するまでの間、お相手の方と何度かお会いして、しっかりお互いを理解して欲しいの。その期間でどうしても嫌だと思ったら、その時は誠実にお断りすればいいわ」

「……断ってもいいの？」

「百合はいま最初から嫌だって決めつけてるでしょう。まだ会ってもいないのに」

「だって、それは……お父様とお母様が勝手に決めるから……」


誰だって自分の相手は自分で決めたいと思うのが普通なんじゃないだろうか。そう思ってぼそぼそと文句を垂れたのに、母は「あら」とわざとらしく口を押さえた。


「出会い方なんて人それぞれじゃない。お見合いで知り合うことだってあるでしょう」

「それは、そうだけど……」

「もしかしたらその人のことを好きになるかもしれないわよ。だから、とにかく会ってみなさいって言ってるの」


何だか上手く丸め込まれているような気がしないでもない。
でも一つ希望が出てきた。絶対に結婚しなければいけないと思っていたけれど、断る選択肢もあるわけだ。

となると、相手に嫌われた方が早いのでは？


「百合、今また悪巧みしてるでしょう」


……母には全てお見通しのようだ。