魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


沢山の植物が植えてあり、噴水も視界を楽しませてくれる。私にとっては憩いの場だ。

それはそうと、先程から今までずっと、藤さんの表情は大して変化していないようにも感じる。いや、正確に言うと変化してはいるのだけれど、常に同じ温度というか。
せめて会話を盛り上げようと、私は彼に質問を投げかけた。


「あの、藤さんは何かご趣味とかありますか?」


好きなものや価値観は、一緒にいる上で大事な指標だ。今のうちに聞いておいた方がいい。
そこまで考えたところで、いやいや私は別にこの人と結婚すると決めたわけじゃないぞ、と頭を振った。


「趣味、ですか?」

「はい」


ごく一般的な質問だと思ったのに、藤さんはなぜか不思議そうに首を傾げる。
どうしたんだろう、と私も首を傾げそうになった時。


「そんなことを知ってどうするんです?」

「……はい?」

「はは、趣味なんて……つまらない質問しないで下さいよ」


何だ。どういうことだ、それは。
一人混乱状態の私をそのままに、藤さんはあっけらかんと言い放った。


「これは政略結婚なんですから。お互いのことは最低限の情報で十分でしょう」

「は、」

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