魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
Lily2 守秘義務ですから
「大っ変に申し訳ございませんでしたッ!」
腰を曲げて九十度。今しがた自分がしでかした失態に、頭の芯まで凍てつく。
木堀さんを探して辿り着いた奥の部屋。そこにいた儚げな美少女は、なんと蓮様その人だったのだ。
あまりにも綺麗だったのと少し興奮していたのとで、深く考えずに、やや強引にメイクを施してしまった。
「それはいいから、早く落としてくれない? もうすぐ夕食の時間でしょ」
「は……はい、今すぐに!」
怒っているんだろうか。それとも呆れている?
声を荒らげるわけでもなく淡々と私に指示を出した彼に、慌てて頭を上げた。
本当はクレンジングをしっかりしたいところだけれど、そうもいかなさそうである。ひとまずメイク落としシートで妥協することにして、私は「失礼致します」とかなり今更な断り文句を入れ、彼の肌に触れた。
「今は簡易的に落とさせて頂きますが、洗顔の際は念入りに……特に目元などは汚れが残りやすいので、」
「あのさ」
私の言葉を遮った彼の声色に、とげとげしさはない。それどころか、むしろ穏やかだった。
「このこと、誰にも言わないで」