魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



「蓮って、好きな人いる?」


確か初等部三年生のとき。椿と二人の帰り道で、そう聞かれた。


「いないよ」

「ほんとに?」

「うん」

「桜のこと、好きじゃないの?」

「好きじゃない」

「ほんと?」

「うん」


しつこいな、と思ったけれど、それを口に出すともっとうるさくなるから、僕はただ椿の質問に大人しく答える。
何度か念を押してようやく納得したらしく、椿はコソコソ話を始めた。


「桜って、俺のことどう思ってるかな」

「……椿、桜のこと好きなの?」


遠回しに聞こうにも、代わりの言葉が思いつかなかった。
僕が言った瞬間、椿は顔を真っ赤にして、こくりと首を縦に振る。

もうこの時には、僕も桜も、婚約者の意味なんて当然理解していた。
だからこそ椿の気持ちをどう受け止めたらいいのか分からなくて、本当に、困ってしまう。

僕の家に来るとき、いつも手を繋いでいた二人。それがなくなったのはいつからだったか。
椿が桜のことを意識するようになってやめたのか、桜が椿にやめようと言ったのか、それは僕の知らないところだ。


「蓮。協力してくれる?」

「…………分かった」


未だにこの時の返事の正解が、分からない。

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