魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
*
「蓮って、好きな人いる?」
確か初等部三年生のとき。椿と二人の帰り道で、そう聞かれた。
「いないよ」
「ほんとに?」
「うん」
「桜のこと、好きじゃないの?」
「好きじゃない」
「ほんと?」
「うん」
しつこいな、と思ったけれど、それを口に出すともっとうるさくなるから、僕はただ椿の質問に大人しく答える。
何度か念を押してようやく納得したらしく、椿はコソコソ話を始めた。
「桜って、俺のことどう思ってるかな」
「……椿、桜のこと好きなの?」
遠回しに聞こうにも、代わりの言葉が思いつかなかった。
僕が言った瞬間、椿は顔を真っ赤にして、こくりと首を縦に振る。
もうこの時には、僕も桜も、婚約者の意味なんて当然理解していた。
だからこそ椿の気持ちをどう受け止めたらいいのか分からなくて、本当に、困ってしまう。
僕の家に来るとき、いつも手を繋いでいた二人。それがなくなったのはいつからだったか。
椿が桜のことを意識するようになってやめたのか、桜が椿にやめようと言ったのか、それは僕の知らないところだ。
「蓮。協力してくれる?」
「…………分かった」
未だにこの時の返事の正解が、分からない。
「蓮って、好きな人いる?」
確か初等部三年生のとき。椿と二人の帰り道で、そう聞かれた。
「いないよ」
「ほんとに?」
「うん」
「桜のこと、好きじゃないの?」
「好きじゃない」
「ほんと?」
「うん」
しつこいな、と思ったけれど、それを口に出すともっとうるさくなるから、僕はただ椿の質問に大人しく答える。
何度か念を押してようやく納得したらしく、椿はコソコソ話を始めた。
「桜って、俺のことどう思ってるかな」
「……椿、桜のこと好きなの?」
遠回しに聞こうにも、代わりの言葉が思いつかなかった。
僕が言った瞬間、椿は顔を真っ赤にして、こくりと首を縦に振る。
もうこの時には、僕も桜も、婚約者の意味なんて当然理解していた。
だからこそ椿の気持ちをどう受け止めたらいいのか分からなくて、本当に、困ってしまう。
僕の家に来るとき、いつも手を繋いでいた二人。それがなくなったのはいつからだったか。
椿が桜のことを意識するようになってやめたのか、桜が椿にやめようと言ったのか、それは僕の知らないところだ。
「蓮。協力してくれる?」
「…………分かった」
未だにこの時の返事の正解が、分からない。