魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
*
二人の表情をよく見比べるようになった。
椿の桜に対する目と、桜の椿に対する仕草。その空気感から、お互いに想い合っていることは日を追うごとに読み取れて。
このままでは決定的に間違ってしまう。確信と焦りが、自分の内側でじりじりと広がっていった。
そして、崩壊はいとも簡単に訪れる。
「蓮と桜って、結婚するんでしょ」
椿が僕に桜への気持ちを打ち明けた帰り道の、わずか半年後だった。
思えばその日は最初からずっと椿の様子がおかしくて、それは彼が僕らの婚約のことを知ってしまったからだと、ここでようやく悟った。
「……椿、ごめん」
「何で謝るの? 蓮が決めたことじゃないんでしょ」
言葉は優しいのに、椿の顔は全く僕を許していない。
それもそうだ。僕は一体、何に対してごめんと言っているのか、分からなくなってしまった。
「ねえ、蓮。どうして、あの時に言ってくれなかったの」
「椿、」
「協力するって言った。俺が桜のこと好きって知ってて、揶揄ってたの?」
「違う!」
思わず声を張り上げた時だった。僕らの背後から物音がして、咄嗟に振り返る。
地面に落ちたピアノの教本。呆然とこちらに視線を向けたまま立ち尽くす、桜の姿があった。
「桜、どうして……」
二人の表情をよく見比べるようになった。
椿の桜に対する目と、桜の椿に対する仕草。その空気感から、お互いに想い合っていることは日を追うごとに読み取れて。
このままでは決定的に間違ってしまう。確信と焦りが、自分の内側でじりじりと広がっていった。
そして、崩壊はいとも簡単に訪れる。
「蓮と桜って、結婚するんでしょ」
椿が僕に桜への気持ちを打ち明けた帰り道の、わずか半年後だった。
思えばその日は最初からずっと椿の様子がおかしくて、それは彼が僕らの婚約のことを知ってしまったからだと、ここでようやく悟った。
「……椿、ごめん」
「何で謝るの? 蓮が決めたことじゃないんでしょ」
言葉は優しいのに、椿の顔は全く僕を許していない。
それもそうだ。僕は一体、何に対してごめんと言っているのか、分からなくなってしまった。
「ねえ、蓮。どうして、あの時に言ってくれなかったの」
「椿、」
「協力するって言った。俺が桜のこと好きって知ってて、揶揄ってたの?」
「違う!」
思わず声を張り上げた時だった。僕らの背後から物音がして、咄嗟に振り返る。
地面に落ちたピアノの教本。呆然とこちらに視線を向けたまま立ち尽くす、桜の姿があった。
「桜、どうして……」