魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


ああ、図星だ。僕は怖かった。居場所を失いたくなかった。三人で一緒にいることが当たり前になりすぎて、崩れてしまうのが怖かった。
椿に嫌われたくない。桜に嫌われたくない。結局僕は自分のことばっかりで、今も怯えている。


「……もう、ほっといてよ。こういう時さ、そっとしとくでしょ、普通」

「でも、」

「蓮のそういうとこ。遠慮なしにずかずか入ってくるとこ、嫌い」


――嫌い。
ずしりと、椿の言葉が体の奥に重く沈んだ。彼は背を丸めて、僕から身を守るように俯く。

この日、僕は椿の光を殺した。
明るく僕らを笑わせてくれた椿はもういない。淀んだ記憶に蓋をしてしまったように、彼は死んだ瞳で穏やかに薄く微笑むだけだった。


「桜、何してるの?」


それからぎくしゃくとしたまま数か月が過ぎて、ある日突然、桜が一人で僕の家にやって来た。
奇妙なくらい笑顔で、彼女はなぜか使用人と話しながら作業をしている。


「あ、バレちゃった。いま蓮にね、お茶作ってるの」

「お茶?」

「もうできるから待ってて」


どうしていきなりそんなことをしだしたのか、さっぱり分からない。給仕は使用人の仕事だ。
首を傾げる僕に、メイドがこっそりと耳打ちをしてきた。


「蓮様に喜んでもらいたいんですって。健気ですね」

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