魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
とどめは藤さんのこのセリフだ。
一ミリも思っていないのに、よくもまあ平然と言えるものだな、と半ば感心してしまう。
それから疑心暗鬼の両親を安心させるために、これから藤さんと二人で出掛けてくるから、と嘘をついて席を立った。
お互い愛想笑いのしすぎで、頬の筋肉が辛い。外に出た途端、私たちはげんなりとした顔つきに戻った。
「……これでいいんですよね」
少々不安になって確認すれば、「大丈夫でしょ」と素っ気ない声が返ってくる。
『ねえ、協力しようよ。お互いにベストな結果で終われるように』
パーティーの日、藤さんが持ちかけてきた提案。それは、この不本意な婚約に、早々にピリオドを打つことだった。
お互い結婚したくないのなら、何も二年先まで引き延ばす必要はない。手っ取り早く決着つけよう、と彼は言ったのだ。
そのために、まずは結婚式をなるべく早く遂行すること。そしてその結婚式をわざと失敗させること。それが藤さんの考えだった。
「でも、具体的にはどうするんですか?」
「そんなの、何だっていいよ。俺が適当に――ああ、指輪でも忘れたことにするから、あんたは怒って出て行くなり、なんなりすればいい」