魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
「でもいくら素敵とはいえ、婚約中のそれは浮気になりますわ。五宮様が婚約を解消されたのも致し方ありませんね」
何も知らずに陳腐な感想や正論だけを並べて、快感に浸っている。それがどうにも気に入らなくて、私は足を止めてしまったのだ。
「鏡、ご覧になりますか?」
突然、通りすがりにそう問いかけられた彼女たちは、当たり前というべきか、呆然とこちらを見て黙り込む。私の顔をまじまじと見て、それからお互い顔を見合わせて。誰かの知り合い? いやいや、知らないわよ。と、そんなアイコンタクトが聞こえてきそうだ。
「いま貴女方、とても下品なお顔をされていましたので。確認された方がよろしいのではないかと思いました」
「なっ……」
みるみるうちに恥辱で顔を赤らめた彼女たちは、金魚のように口をぱくぱくと動かし、言葉に詰まっている。
けれども次の瞬間、頬に刺した赤みが嘘のように引いていき、真っ青になってしまった。
僅か数秒の変化に不審に思い、首を傾げた時。
「い、五宮様……!?」