魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
真っ直ぐこちらを見据える彼。確かに、譲る気はないらしい。
どうしようか、と視線をさ迷わせていると、蓮様が切り出した。
「桜と椿を引き合わせたの、君なんでしょ?」
一応疑問の体を保っていたけれど、彼はとっくに分かっているようだった。否定するのも違うので、ひとまず頷いておく。
「でも、あの、そんな大層なことは……」
「ごめん」
突然、目の前で下げられた頭。一瞬、わけが分からなくて混乱した。
「君のことが嫌いって言ったの、嘘。ごめん。……そうでもしないと、君を手放せなかった」
つまり、手放したかった、と。そういうことだろうか。
謝られているのに、何だかますます悲しくなってきてしまう。
「自分勝手でごめん。だけど、もう君を執事として傍に置いておくだけじゃ、僕は耐え切れなかった」
蓮様が静かに顔を上げて、私の瞳を覗き込む。
「僕は、執事じゃない君が欲しい。『佐藤』じゃなくて――『花城百合』が、欲しい」
「え……?」
「嫌なら振り払って」
そう宣言した彼は、私の手を自身の口元まで引き寄せた。そして。
「れ、蓮様……!」