魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
手の甲にそっと、触れるだけのキスを落とす。
流れるように上目遣いでこちらへ視線を投げた彼は、小首を傾げて言った。
「いいの?」
「えっ、い、いいも何も……嫌なわけがありませんっ」
慌てて口走った言葉は、自分でもよく意味を理解できていない。
蓮様が酷く嬉しそうに目を細める。その仕草だけで胸が苦しくなって、体中の血が沸騰しそうだ。
そっか、と呟いた彼の声は低いのにどこか浮ついていて、口角もいつの間にか緩やかに上がっていた。
繋がれた手を不意に引かれ、彼との距離が縮まる。
「ごめんね」
耳元で囁かれた声が、明確な甘さを含んで私を蝕む。
今まで私につけた傷跡を丁寧に直していくかのように、彼は優しい声色で上書きしていった。
「君のこと、全然嫌いじゃない。嫌いになれない。……君が傍にいないと、落ち着かない」
「え、あ、あの……」
「迎えに行くから、待ってて」
その唇が、私の額を啄んだ。