魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
*
「蓮様。失礼致します」
パーティーから一週間と経っていない日のことである。
竹倉がノックの後、珍しく「お客様です」と告げた。
「僕に?」
「はい、蓮様にお会いしたいと仰っております。六角様という方です」
六角――その名前に、目が覚めたような衝撃を受ける。
すぐさま諾の返事をして、応接室へ向かった。
『初めまして。百合さんの婚約者の六角藤と申します』
彼女の隣にいた彼の名を、記憶から掘り起こす。
婚約者。そう聞いた瞬間、思わず眉根を寄せてしまったのも余計に思い出し、苦々しい気持ちになった。
佐藤、もとい花城百合のことは、パーティーから帰ってきた日に竹倉から伝えられた。
花城家の令嬢であったこと。故に婚約者がいること。家出をして、五宮家に執事として仕えていたこと。嘘みたいな本当の話だった。まるで、最初から「佐藤」なんて人物は存在していなかったかのように。
「ああ、わざわざ申し訳ありません。お会いできて良かった」
応接室では、既に客人が待っていた。第一印象も第二印象も変わらず胡散臭いのは、自分の中でフィルターがかかってしまっているからだろうか。
「……何の用です?」
「蓮様。失礼致します」
パーティーから一週間と経っていない日のことである。
竹倉がノックの後、珍しく「お客様です」と告げた。
「僕に?」
「はい、蓮様にお会いしたいと仰っております。六角様という方です」
六角――その名前に、目が覚めたような衝撃を受ける。
すぐさま諾の返事をして、応接室へ向かった。
『初めまして。百合さんの婚約者の六角藤と申します』
彼女の隣にいた彼の名を、記憶から掘り起こす。
婚約者。そう聞いた瞬間、思わず眉根を寄せてしまったのも余計に思い出し、苦々しい気持ちになった。
佐藤、もとい花城百合のことは、パーティーから帰ってきた日に竹倉から伝えられた。
花城家の令嬢であったこと。故に婚約者がいること。家出をして、五宮家に執事として仕えていたこと。嘘みたいな本当の話だった。まるで、最初から「佐藤」なんて人物は存在していなかったかのように。
「ああ、わざわざ申し訳ありません。お会いできて良かった」
応接室では、既に客人が待っていた。第一印象も第二印象も変わらず胡散臭いのは、自分の中でフィルターがかかってしまっているからだろうか。
「……何の用です?」