魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



「……ほんとにさぁ、つくづく思うけど。君たち二人揃って、僕のこと舐めてるよね」


電話越しの相手が不服を垂れる。その割には満更でもなさそうであった。


「そういうつもりはありませんが」

「まあいいよ、僕としては楽しくできれば問題ない。君とも、もちろん百合とも、一緒に仕事がしたいとは思っていたからね」

「……その百合って呼ぶの、やめてもらえませんか」

「あはは、失礼。なんて呼べばいい? 花城さん?」


まあそれでいいです、と返して、小さく息を吐く。
早一時間走り続けている車内の空気を入れ替えようと、窓ガラスを開けた。


「じゃあ切るよ。僕も忙しいからね」

「……茜さん」


初めて呼んだ名前は、少しだけ緊張した。


「よろしく、お願いします」

「こちらこそ。これからよろしく、『Ren』くん」


通話が終わる。画面が切り替わるや否や、再び電話だ。父からの着信だった。


「もしもし。……お父様、今そちらへ向かっていますが」

「蓮。お前、自分が何をしたか分かっているのか」


電話越しでも低く唸るような威圧感がある。
けれども、今は怖くない。自分の気持ちは、既に決まっていた。


「はい、遅くなり申し訳ありません。ようやく準備できました。『代替案』を」

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