魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
私の肩を掴んで、母が訴えかけるように。泣きそうな顔をして、言った。
「あなたの本当の気持ちを教えて」
これほどまでに母に強く乞われたことはなかった。
このまま私は、自分だけが良い思いをして終わりでいいのだろうか。あの日の彼の言葉を、待っているだけでいいのだろうか。
『迎えに行くから、待ってて』
夢なんかじゃない。今も鮮明に覚えている。私は、信じている。
「……見てて、欲しいの」
震える唇で、懸命に伝えた。
私の一音一音を見逃すまいと、母が息を呑む気配がする。
「ちゃんと、私の思うようにするから……だから、止めないで、見てて欲しい」
空白が訪れて、顔をじっと見つめ合う。
「分かったわ」
あまりにも曖昧な物言いをしすぎたせいか、母は未だ掴み切れていないようだった。
けれども、私の言葉に真剣味を見つけたらしい。きっぱりと顎を引いて頷き、ようやく立ち上がった。
そろそろ時間だろうか。私も母にならって椅子から立ち上がる。
「お母さん」
振り向いた母に、精一杯、茶目っ気たっぷりの笑顔を向けた。
「親不孝な娘で、ごめんね」