魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



結婚式は、滞りなく進んでいった。
入場が終わり、牧師の聖書朗読を聞きながら、静かに意思を固める。


『別に、あんたは何もしなくていいから。周りに合わせて、俺のことサイテーとかなんとか言っとけば、あの過保護な親も婚約取り下げるでしょ』


藤さんはそう言っていた。言われた瞬間は文字通りの意味でしか受け取れなかったけれど、私はやっと理解したのだ。
これは彼なりの優しさだった。私に非が及ばないように、私が彼との婚約破棄をした後で「傷もの」にならないように、取り計らってくれていたのだ。

ごめんなさい、と心の中でそっと隣の彼に詫びる。

最初から最後までずっと、私の我儘を尊重してくれていただけだった。行きつく結論は、目指す終着点は一緒だけれど、それでも彼はあくまで私の希望に沿おうとしてくれていたのではないだろうか。

私の我儘だもの。自分で貫き通す。
せっかく気遣ってくれた藤さんには、ちょっと申し訳ないけれど。

やっぱり、自分のことは自分で決める。だって、私の人生なんだから。


「新郎六角藤さん、あなたはここにいる花城百合さんを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

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