魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
式は誓約の場面に入った。
神父の問いかけに、藤さんが明朗に答える。
「はい。誓います」
次は私の番だ。ごくりと唾を飲み、顔を上げた。
「新婦花城百合さん、あなたはここにいる六角藤さんを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
周囲の視線が自分に向いているのが分かる。目の前の神父も、私を見ている。
ねえ、やっぱり私は待っているだけじゃ嫌。性に合わない。自分の夢も幸せも、自分の足で、手で、捕まえに行きたいと思ってしまう。
それで、大好きな人の――あなたの隣もやっぱり、自分で掴みにいきたいの。
「……誓、」
声が震える。でも、もう、迷いたくない。
「誓えません!!」
「えっ……!?」
ごめんなさい、神父さん。ごめんなさい、藤さん。そして、お父様、お母様。
叫んだ後は、踵を返して脇目も振らずに駆け出した。ドレスの裾を持ち上げて、踏んでも蹴っても気にせずに、とにかく転ばないようにだけ気を付けて、ひたすらに急いだ。
長いバージンロードの三分の二くらいまで走ったところで、目の前の扉が開く。
「……どう、して」