魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
思わずといった様子で吹き出した彼に、心臓がくすぐったくなった。
「蓮様……あのっ、」
「迎えに来た。ちょっと――いやかなり、想定外のことが起きたけど」
何で君が走ってくるかなあ、と呟いた蓮様は、それでも優しい目をしている。
「どうして蓮様がここに……」
「君の婚約者、って言うのもほんとは癪だけど。まあ彼に、色々教えてもらった」
「藤さんに、ですか?」
想像の斜め上、いや真上くらい。どうしてそこが繋がっているのか不思議で仕方ないけれど、どこかで「やっぱり」と腑に落ちた。
藤さんはいかにもどうでも良さそうに、適当に振舞っていて。でもきっと、彼は尽力してくれていたのだろう。また会うことはあるだろうか。直接お礼を伝えられるかは分からないから、心の中で深く感謝しておく。
「まあ、そんなことはどうでもいいよ。過ぎたことだし」
これからの話をしよう。そう言って、蓮様は表情を引き締めた。
「これから、ですか」
「うん、これから。……じゃあ、もう言うけど。僕は君を迎えに行くために、準備は一通り終えた。あとは君次第」