魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


悲しい時と違って、嬉し涙はゆっくりと、じんわりと溢れ出るものだと、いま知った。
こんなにも穏やかで優しい熱が、どうして胸の奥の奥まで焦がしてしまうのか。愛しいほどに苦しくて、でも抱き締めていたい恋情だった。

照れたように眉尻を下げた彼が、歯を見せて笑うから。愛しくて愛しくて、私まで頬が緩む。


「花城百合さん。僕と、結婚してくれますか?」


地面に膝をつけた正装でも何でもない彼が、私に問う。


「もちろん。喜んで」


そう答えれば、指輪の代わりとでも言うように、彼は私の薬指にキスを落とした。
こんなプロポーズ、きっと世界中どこを探したって見つかりっこない。


「あの、蓮様……非常に申し上げにくいんですが」

「なに?」

「私、両親の許可なく飛び出してきたので、早めに蓮様もご一緒に来ていただけると……」

「あー、待って。それを言うなら僕の両親にも、今すぐにでも会ってもらいたいくらいなんだけど」


早速飛び出した懸念事項に、顔を見合わせて二人で吹き出す。
立ち上がった蓮様が、再び私の手を取った。


「百合。走るよ」

「またですか!?」

「そんなんで僕の妻、務まるの?」

「スパルタすぎません~!?」

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