魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


普段ある程度私の我儘を聞いてくれる父も、さすがに今回は折れてくれない。
それもそうだろう。何せ、これは花城(はなしろ)家の問題なんだから。

花城家(うち)は代々、お医者様。大じい様も、おじい様も、お父様も、みんなそう。
息子だったら医者に、娘だったら医者の嫁に。それが暗黙のルール。

この家に女の子として生まれた私は、優秀なお医者様の妻として生きていくレールが敷かれていた。
でも――


「分かったわ。お父様がそんなに言うんなら」

「百合……」


でも私は、絶対に夢を諦めたくない。


「私、この家を出る!」


好きでもない人と結婚して、ご機嫌取りをして、静かに年老いていくなんて。そんなの嫌。
叶えたい夢がある。やりたいことがある。この名前が邪魔になるなら、捨ててしまえばいい。


「な――何を言ってるんだ! いい加減なことを言うんじゃない!」

「いい加減じゃないわ。ちゃんと当てはあるんだから」


そろそろ結婚の話をされるんだろうな、と、実は分かっていた。
だから私は毎日こそこそと調べて準備をして、作戦を練っていたのだ。


「私、五宮(いつみや)家に行くから!」

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