魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


草下さんだけに聞こえるように言ったつもりだったのに、すぐ横からくつくつと笑い声が聞こえた。犯人は森田さんだ。


「お前、面白れぇなー……初日からしっかりこき使われてやんの」


む、と不機嫌を隠さず顔をしかめる。もちろんこれは葵様にではない、森田さんにだ。
しかしこれは、あくまで序章にすぎなかったのである。

次の日も、そのまた次の日も、葵様は「抱っこしてくれないと起きない」と駄々をこね、結局食堂まで背中に乗せていくのが定番になりつつあった。
葵様の馬になって四日目。とうとう体に支障が出てきたので、草下さんを呼んで代わりに抱き上げてもらった。


「わあっ、すごい! クサカ、もっと高く!」

「それでは一度姿勢を変えますね」


抱っこどころか肩車をしてみせた草下さんに、葵様はすっかりご機嫌だ。

それから葵様と過ごすうちに、少しずつ好みやお気に入りの場所などが分かるようになってきた。
屋敷内で走ると怒られるからか、かくれんぼがお好きらしい。私が鬼になったり、葵様が鬼になったり、時には草下さんにも参加してもらってよく遊ぶようになった。


「あ~~~……」

< 43 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop