魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


ある日の夜。ミーティングを終えて解散になったところで、草下さんが盛大なため息をついていた。


「……草下さん、もしかしてすごくお疲れですか?」


眉間の皺を押さえていた草下さんに声を掛けると、彼が顔を上げる。気まずそうに目を逸らしてから、彼は口を開いた。


「まあ、うん、ちょっと」

「最近葵様のお相手もして下さってますもんね。すみません、私がきちんとみられればいいんですが……」


オーディションに一応合格したものの基本的にポンコツな私と比べ、草下さんはすごく優秀だ。竹倉さんとよく話しているところを見かけるし、色々と仕事を任されているのだろう。


「あー……いや、それは気にしなくていい。結構わんぱくだからな……一人でみるのは大変だろ」


さすが、懐の深さが違う。彼の優しさに胸を打たれていると、「あのさ」と逆に話題を提供された。


「蓮様の好きなものとか、知ってるか?」

「え?」


予想外な話の流れだった。目を丸くした私に、彼が慌てたように付け足す。


「どうも俺、蓮様に気に入られてないみたいで……何か不備でもあったんじゃないかって考えたけど、結局思い当たる節がなかったんだ。だから、せめて蓮様の好みでも分かればと思ったんだけど」

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