魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
返ってきたのは、想像もしていない言葉だった。
呆気に取られて声も出ない私に、蓮様は顔色一つ変えずに言い募る。
「僕の好きなものなんて、君がその目で見た通りだよ。わざわざそんなことを言うためにここで待ってたの?」
「え? いえ、私はただ……」
「それとも何、欲しい物でもあるの? 僕を脅しに来た?」
つらつらと続く冷酷な声。彼の目は相変わらず悲しげで、その紺色からはひたすらに私への負の感情が読み取れた。
「まさか誰にも言ってないよね?」
「あ、当たり前です……! それは守秘義務ですから!」
「そう」
顔を背けた蓮様に、弁明しなければ、と気が急く。
「草下が――蓮様と、親睦を深めたいと申していたもので……」
「へえ」
「蓮様は……その、草下がお嫌ですか?」
少し直球すぎただろうか。口にしてから自責の念に駆られた。
彼は視線を私に向けると、「別に」と端的な回答を寄越す。
「左様ですか……でしたらあの、何かお気に召さない点は」
「ないよ。彼は優秀だ」
蓮様から人を褒める言葉が飛び出したのが意外だった。
草下さんは優秀。それは私だって毎日実感している。だったら、どうして――
「僕は執事なんて必要としてない」