魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


返ってきたのは、想像もしていない言葉だった。
呆気に取られて声も出ない私に、蓮様は顔色一つ変えずに言い募る。


「僕の好きなものなんて、君がその目で見た通りだよ。わざわざそんなことを言うためにここで待ってたの?」

「え? いえ、私はただ……」

「それとも何、欲しい物でもあるの? 僕を脅しに来た?」


つらつらと続く冷酷な声。彼の目は相変わらず悲しげで、その紺色からはひたすらに私への負の感情が読み取れた。


「まさか誰にも言ってないよね?」

「あ、当たり前です……! それは守秘義務ですから!」

「そう」


顔を背けた蓮様に、弁明しなければ、と気が急く。


「草下が――蓮様と、親睦を深めたいと申していたもので……」

「へえ」

「蓮様は……その、草下がお嫌ですか?」


少し直球すぎただろうか。口にしてから自責の念に駆られた。
彼は視線を私に向けると、「別に」と端的な回答を寄越す。


「左様ですか……でしたらあの、何かお気に召さない点は」

「ないよ。彼は優秀だ」


蓮様から人を褒める言葉が飛び出したのが意外だった。
草下さんは優秀。それは私だって毎日実感している。だったら、どうして――


「僕は執事なんて必要としてない」

< 47 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop