魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
あっさりと、さも正論のように告げられた。
完全な意図を理解しかねて戸惑う私に、彼は付け加える。
「専属執事だなんて言うけど、誰も僕の意見を加味しない。執事をつけるのは葵だけで十分だ」
つまり蓮様は草下さんのことを嫌っているわけではなく、専属執事そのものを煩わしく思っている、ということだろうか。
ようやく腑に落ち、なるほど、と内心独りごちる。
これは草下さんに伝えるべきだろうか、と思考の海に泳いでいると、蓮様が「で?」と首を傾げた。
「君は一体、何が欲しいの」
「えっ?」
もしかして、本当に私が蓮様の秘密をネタにして物乞いをしにきたと思われている?
精一杯誤解を解こうと尽力したはずなのに、全く伝わっていなかったようだ。
再度しっかり否定しようとしたところで、いや待てよ、と閃く。
「物ではなくても良いですか?」
私がそう問えば、蓮様は怪訝な顔になった。
「失礼致します!」
「は? ちょっ……」
彼の腕を引いて、廊下をひた走る。
一番奥の部屋へ駆け込み、はあ、と深く息を吐き出した。
「何なの、急に……」
気だるげに不服を垂れた彼を振り返り、私は嬉々として要望を述べた。
「蓮様。私にあなたを着飾らせて下さい!」