魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
少し照れ臭そうに返した蓮様を、ドレッサーの前へ促す。
今日はどのコスメを使おうか、と軽く目を滑らせていると、彼が口を開いた。
「……君は、僕のことを着せ替え人形とでも思ってるわけ?」
思わず手を止めて彼を見やる。
先程のような攻撃的な雰囲気はない。どちらかといえば、諦めたような、そんな空気だった。
「とんでもありません! 色んなスタイルを見てみたいとは確かに思いますが……それは、蓮様が魅力的だからです」
「ふうん」
いまいち納得してもらえていない気がする。
人形、というのは失礼だけれど、正直着飾りたい対象であるというのは間違いなかった。意欲が掻き立てられる素材でなければそうはならないわけで、でもまるっきり本人に伝えても「だから人形ってことじゃん」と一蹴されてしまいそうだ。
「君の趣味はこういうことなの?」
「お化粧をすること、ですか?」
「そうじゃなくて……男を、こういう風に女装させることが好きなの?」
「いえ……特別そういうわけではありませんが……」
思えば、私は彼の性別を知ってもなお、衝撃という衝撃は受けなかった。まあこれだけ綺麗な人だったらそういうこともあるよね。と、なぜか自分の中で腑に落ちてしまった部分がある。
「変なの。僕ふつうに男なんだけど。分かってる?」