魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
さあね、とは。
あからさまに不満な顔でもしていたのだろうか。私を見た蓮様が、面倒そうに付け足す。
「特に深い理由はないよ。強いて言えば、君があのことを口外しないか監視するため、かな」
「なっ……そんなこと、絶対にしません!」
いくら蓮様とはいえ、ちょっと心外だ。どれだけ口が軽いと思われているんだろう。
思わず声のボリュームを上げた私に、彼は「絶対になんて言い切れないでしょ」と涼しい顔だ。
「逆に聞くけど、どうして君は聖蘭に通うの。どんな学校か分かってる?」
「もちろん、理解しております。蓮様を学校でもお守りするためですよ」
「へえ……」
話がややこしくなるだけなので、本当のことは濁しておく。
自分から質問した割には、彼は私の返答にさほど興味がなさそうだった。
十五分ほど歩いたところで、聖蘭学園の白い校舎が見えてくる。大きな門を抜ければ、色とりどりの花が両脇に植えられたアプローチだ。
「君、どこまでついてくる気?」
校舎内の階段を上っていると、蓮様がうっとうしそうに述べる。
それはもちろん、と前置いて、私は続けた。
「蓮様の教室までお送りしますよ」