魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



「モーニンッ、いい朝だね! って、あれ? 百合、あんた髪どうしたの!?」


自分の教室の席についたところで、目の前に座っていたクラスメイト――いや、友人が振り返った。
その拍子に、彼女の少し赤みがかったロングヘアがふわりと舞う。


「おはよー……まあその、心機一転? みたいな?」


視線を逸らして誤魔化すと、「怪しい」と(かえで)が腕を組んだ。


「絶対に何か隠してるでしょ、吐きなさい!」


き、とわざとらしく目をつり上げても、彼女の可愛らしい垂れ目では迫力が足りない。
表情がころころ変わったり、声を荒らげたり、そんな彼女は私の幼馴染だ。楓も例に漏れずご令嬢だけれど、堅苦しくない彼女の振舞い方が私は気に入っている。


「うーん。簡単に言うと、家出した」

「家出!?」


楓が私の方に身を乗り出した途端、教室内の視線が集中してしまった。
しぃ、と人差し指を立てた私に、彼女は肩を竦める。


「ごめんごめん。で? 家出ってどういうこと」

「どういうも何も……お父様が勝手に結婚相手用意するから、飛び出してきた」

「また始まったよ、百合の暴走」

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