魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
またって何よ、失礼ね。そんな思いを込めて軽く睨んでみたけれど、楓は全く気にしていないようだ。
「その結婚相手、どんな人なの? かっこいい?」
「さあ。写真は見たけど、大して覚えてないよ。まあかっこいいんじゃない?」
「え~~~何それ~~~」
口を尖らせる楓に、文句を垂れたいのはこっちよ、とため息をつく。
「高校生の間は好きにしていいって。何様? って感じじゃない?」
「でもでも、百合のお父さんが選んだんだから将来有望ってことでしょ。絶対安心じゃん! 何で嫌なの?」
そりゃあ父が認めたんだから、家柄は申し分ないと思う。ミーハーで面食いな楓だったら、真っ先に飛びつくような好物件なのは間違いない。
「……だって、結婚は好きな人としなきゃ」
自分の立場上、そういかないのももちろん分かっているけれど。でも、まだ一度も恋したことがないのに結婚するだなんて、実感がわかなかった。
「おっとめ~~~! まあ百合のそういうとこ、可愛くて私は好きだけどねん!」
「からかわないでよ……」
「うんうん、なるほど。家出した理由は分かったよ。百合は今どうしてるの?」
「あー、うん、それが……」