魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


君こそ良かったの、と付け加えられた彼の言葉に、私は首を捻る。


「さっきいた子、君の友達なんじゃないの」

「ああ……! ええと、はい、そうですね……」


先程からブレザーの中で、バイブレーションが何度も鳴っていた。恐らく楓からの連絡だろう。
彼女には明日きちんと謝ることにして、私は顔を上げる。


「蓮様のご友人でしたら、私もきちんとご挨拶をしたいのですが……」


きっとこの先、少なからず関わることになる。今は半ば逃げ出すような形になってしまったけれど。


「いい。必要ない。今後会ってもあんまり話さないで」

「左様ですか……かしこまりました」


彼の様子からして、学校では私に干渉して欲しくないようだ。確かに、四六時中監視されているようで窮屈なのかもしれない。

だったら家ではきちんと役割を果たそう、と決意を固める。
本契約を結んでもらうには、蓮様に今後も必要とされなければならない。それが、私の唯一やるべきことだ。


「あっ、お帰りなさいませ!」


玄関の扉を開けて最初に出迎えてくれたのは、木堀さんだった。

蓮様はそのまま家の中へ入ると、二階へ足を進める。


「蓮様!」

< 62 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop