魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
君こそ良かったの、と付け加えられた彼の言葉に、私は首を捻る。
「さっきいた子、君の友達なんじゃないの」
「ああ……! ええと、はい、そうですね……」
先程からブレザーの中で、バイブレーションが何度も鳴っていた。恐らく楓からの連絡だろう。
彼女には明日きちんと謝ることにして、私は顔を上げる。
「蓮様のご友人でしたら、私もきちんとご挨拶をしたいのですが……」
きっとこの先、少なからず関わることになる。今は半ば逃げ出すような形になってしまったけれど。
「いい。必要ない。今後会ってもあんまり話さないで」
「左様ですか……かしこまりました」
彼の様子からして、学校では私に干渉して欲しくないようだ。確かに、四六時中監視されているようで窮屈なのかもしれない。
だったら家ではきちんと役割を果たそう、と決意を固める。
本契約を結んでもらうには、蓮様に今後も必要とされなければならない。それが、私の唯一やるべきことだ。
「あっ、お帰りなさいませ!」
玄関の扉を開けて最初に出迎えてくれたのは、木堀さんだった。
蓮様はそのまま家の中へ入ると、二階へ足を進める。
「蓮様!」