魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
純粋な感想に、少し照れ臭くなる。
しかし葵様は「お姫様だよ!」と主張した。
「だって、シンデレラも魔法できれいになるもん! いつもはお掃除とかしてるのに……」
「シンデレラ……」
そういえば、蓮様もそんなことを言っていたような――とそこまで考えたところで、私は慌てて立ち上がった。
「あの、草下さん。蓮様にはいつも何のお茶をお出ししていましたか?」
「え? ああ、そうだな……」
思案顔の彼がいうには、ミルクティーをお出しした時が一番反応が良かったように見えた、だそう。
草下さんも草下さんで蓮様の好みを把握できず色々と苦戦していたようなので、「確証はないけどな」と苦笑いだった。
「分かりました、ありがとうございます!」
急いで自室に戻り、制服からスーツへ着替える。
キッチンへ向かえば、木堀さんが私を見つけて声を掛けてくれた。
「佐藤さん、こちらにいらっしゃるの珍しいですね」
「あ、はい……! 蓮様にお茶をお持ちしようと思いまして」
「そうでしたかぁ」
のほほんとした口調の彼女に癒されていると、作業台の端に追いやられている果物が目に入る。オレンジ、いちご、キウイ――確か朝食で使用されていた種類だ。
「これって、夕食にも使用するんですか?」