魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



「もう、本っ当にびっくりしたんだからね! しかも私のこと置いて行っちゃうし!」


翌日のお昼休み。
天気がいいからということで、中庭のベンチで昼食をとることにした。

ひどいひどい、と先程から文句をぶつけてくる楓に、私は眉尻を下げる。


「ごめんって。昨日はちょっと、色々想定外で……」


蓮様がご友人と一緒にいらっしゃるとは思っていなかったし、私の存在を隠しておきたいと仰るのも突発的だった。

楓は「まあいいけどさぁ」と零した次の瞬間には、小さい口を開けてサンドイッチを頬張っていた。切り替えが早いのは、彼女のいいところだと思う。


「百合がいなくなった後、あの椿様と二人でお話できたしね~! むしろありがとうって感じ」

「椿様って……」


昨日蓮様の隣にいた人、だよね?
彼の顔を必死に思い出していると、楓が呆れたように話し出す。


「その顔は全然分かってないね? まあ百合の社交界への興味のなさは昔からだから、幼馴染の楓ちゃんが詳しく説明してあげるけど」

「あ、ありがとう」


よろしい、とでも言いたげに頷いた彼女は、嬉々として人差し指を立てた。


「いいこと? 七重(ななえ)椿様は、蓮様と唯一対等にお話できるスーパー御曹司ですのよ!」

< 71 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop