魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


なぜ急にお嬢様口調に。
会話にユーモアを混ぜ込みたくなったのか、はたまた彼女の気紛れか。それはいいとして、楓の話を大人しく聞くことにする。


「パーティーに参加されたあかつきには、ご令嬢からのダンスの申し込みが絶えないの。しかも全てご丁寧に対応して下さって、嫌な顔一つしない! 超超超優良物件!」

「人に『物件』って言うのやめない?」


要するに、楓が騒ぐほどの有名人だということだ。
彼女の話を聞き流しながら記憶を掘り返していたけれど、確かに温厚そうなイメージではあった。

ただ私が気になるのは、そんな椿様と蓮様がご一緒にいるということ。
一見正反対に思える二人。どうにも仲睦まじく話す様子が想像できずに、頭の中で疑問符が残った。


「やっぱり婚約者とかいるのかなあ。ねえ、どう思う?」

「私に聞かれても」


そう言う楓だって、婚約者がいるじゃない。と、それは心の中にしまっておく。別に彼女は本気で嘆いているわけではないのだろう。

スーパー御曹司、なんて単語が出たけれど、楓も負けず劣らずなスーパーお嬢様だ。
家では厳しく躾けられたようで、その反動か、両親の目の届かないところではかなりフランクに振舞っている。


「なに、俺の話?」

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