魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
穏やかな問いかけのはずなのに、まるで咎められているようだった。
途端に呼吸がしづらくなって、私は必死に思考を巡らせる。
「どうして……と言いますと」
「だって蓮が女の子と二人でいることなんて、滅多にないんだよ。こう言っちゃなんだけど、友達も俺くらいしかいないしね」
彼は何が言いたいのだろう。私から何を聞き出したいのだろう。
自分の心音が近い。正しい答えは何なのか、どう答えれば蓮様にご迷惑がかからないのか。そればかりがぐるぐると頭の中でさ迷っている。
「蓮に婚約者がいることは知ってる?」
「はい。存じております」
「そっか。じゃあ秘密の恋愛ごっこってわけじゃなさそうだ」
口調は穏やかだ。しかし明確に揶揄された。
そこはかとなく見えた彼の本質に、ますます不安が募る。
「君は、蓮の何なの?」
きっと、彼が聞きたかったのはこれだ。純粋に友人のことを心配して、私の方に探りを入れてきたのかもしれない。
考えろ、私。なんて言えば丸く収まる? どんな言葉を使えば彼を納得させられる?
「私は――」
「椿」
邪気のない呼びかけ。振り返ると、蓮様が少し離れた廊下からこちらへ歩いてくるところだった。
「何してるの」
「たまたま会って、ちょっと話してたんだよ」