魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
たまたま。半分正解で、半分嘘だ。
でも椿様の目は今度こそ笑っていなかったので、私は黙って頷いておく。
「……ふーん」
蓮様が視線で「何も言ってないよね?」と訴えかけてくる。もちろんです、という意思表示のために、私は大きく首を縦に振った。
「なに、椿。もしかしてこの子にもちょっかいかけるつもり?」
「言い方が悪いよ。それに、蓮の知り合いにそんなことしない」
「別に知り合いでも何でもない。好きにすれば」
じゃあ、と踵を返した蓮様を、引き留めたい衝動に駆られる。これ以上はボロが出そうで怖かった。
「あの、すみません。私もこれで」
「ああ……ちょっと待って」
軽く腕を取られ、後ろに重心が傾く。
椿様は「ごめん」と息を吐き出し、それから表情を和らげた。
「本当に蓮とは何もないんだね。変なこと聞いた。ごめん」
「いえ……」
「ごめんね。怖がらせて」
そっと離された腕に、安堵して胸を撫で下ろす。
彼の様子からは、もう攻撃的な色は見当たらなかった。
「椿様は、ご友人思いの方なんですね」
だから蓮様も彼と一緒にいることを選んだのかもしれない。
私の言葉に、椿様は苦笑する。
「友達思い、か……どうだろうね。俺はそんなにできた人間じゃないよ」