魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



その日は珍しく、カフェテリアで昼食をとろうということになった。
楓も私も、普段は静かな中庭で昼休みを過ごしたいという願望がある。――と、いうのも。


八色(やいろ)様、ごきげんよう。ご一緒してよろしくて?」


二人揃っていただきます、と手を合わせたところで、楓の隣に腰を下ろした女子生徒が一名。よろしくて? と問いかけたわりに、彼女は既に退く気はなさそうだ。


「あー……あはは。私、お昼は百合と二人で食べたいなあって思うんですよね……」


楓のことを「八色様」と呼ぶのは、私以外きっとみんなそう。
頭が良くて運動神経が抜群で、そのうえ美少女とくれば申し分ない。楓はいつだってみんなの憧れだった。


「あら、花城さんもいらっしゃったんですのね。すみません、見えていませんでした」


楓の隣に座る彼女がそう言えば、周りからくすくすと陰湿な笑い声が上がる。
特に気にすることもなくパスタを口に運んだ私とは対照的に、楓は険しい顔つきになった。


「私の大切な幼馴染に、そういうことを言わないで下さい」

「楓。いいよ、大丈夫」

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