魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
魔法は解けてしまった。解けて分かった。
私はなんてことない、どこにでもいる存在。シンデレラじゃない。もう魔法使いはやってこない。
「だから、魔法使いになりたいんです」
いつか解けるのなら、またかければいいのだ。有効期限なんて、そんなの知らない。だってずっとかけ続ければ、ずっときらめいていられるでしょう?
「……は? 魔法使い?」
「私の夢です。コスメや香水、ドレスを全部プロデュースして、自分のブランドを立ち上げる。使った人に、魔法がかかるような……」
ラメが輝くアイシャドウ、色とりどりのネイルポリッシュ、上品に香るオードパルファム。
人によって求めるものも必要なものも違うけれど、動機は同じ。みんな、わくわくしたいから。私はそういう魔法を、かけ続けていたいのだ。
「最初に会った時、蓮様が私に言って下さいましたよね。魔法使いみたいだって」
『……君は、魔法使いみたいだね』
鏡に映る自分の姿を見つめて、ほう、と息を吐き出すように。
見間違いでなければ、勘違いでなければ――彼もまた、私の魔法にかかってくれたのではないかと、思った。
「私、すごく嬉しかったんです。蓮様があまりにも綺麗だったからっていうのもそうですけれど、この人なら、私を本当に魔法使いにしてくれるって」