魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
ばかげていると、笑われてしまうだろうか。頭の中がお花畑。メルヘンチック。そう言われてしまうだろうか。
でも、それでも私は。あの日、彼の中に見つけた悲しみの色を、どうしても見過ごせなかった。
「蓮様は、シンデレラですよ。何もおかしくないです。私が今まで出会った中で、一番綺麗だったんです」
私の腕を掴んだまま固まる彼の手の上から、自分のものをそっと重ねる。
骨ばった手の甲。喉仏、筋の浮き立つ首。
きちんと見れば見るほど、彼は「男の子」だった。何を当たり前のことを、といった感じだけれど、私はこの時、初めてこの人の性別をきちんと理解した気がしたのだ。
「……もしかして、僕、慰められてる?」
は、と微かに口角を上げた蓮様に、息を呑む。
無礼だっただろうか、と慌てて手を離し、弁解の言葉を探した。
「いえ、その……蓮様はいつも、ご自身のことを卑下なさるので……」
「まあ、そうだね。逆に気味悪がらない君の方が、おかしいと思うけど」
「そんなことありません」
きっぱり言い渡すと、今度こそ彼は苦笑した。蓮様が表情を和らげることは滅多にないから、驚いてしまう。
彼は目を伏せ、穏やかな声色で呟いた。
「……安心するんだ。ドレスを着ると、違う自分になれたみたいで」