魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
しん、と静まった空気。
登校途中だった周りの生徒たちも、彼の言葉に足を止めた。
「……専属執事?」
椿様は、たったいま蓮様が放った単語を繰り返す。理解が追いついていないようだった。
「行こう」
「えっ、蓮様……!?」
踵を返して歩き始めた蓮様に、ひたすら戸惑う。
迷った挙句、立ち尽くす椿様に軽く一礼し、蓮様の背中を追いかけた。
「蓮様、お待ち下さい! あの……」
「なに?」
校舎に入ってから、彼がようやく振り返る。
私は深く息を吸い込み、胸に手を当てながら質問を捻出した。
「よ、良かったのですか? 私が、蓮様の執事だと公言してしまって……」
ついこないだまで、頑なに嫌がっていたはずだ。学校では以ての外、家でも必要最低限のことしか彼は頼んでくれない。
「もう隠すのも潮時だと思っただけだよ。それに、」
蓮様は立ち止まって、私の顔をまじまじと見つめる。やっぱり何かついているんじゃないだろうか、と不安になってしまった。
「僕が君を構おうが構わなかろうが、君は傷ついてた」
「……え?」