マザー症候群


 「冷血人間とは酷いな。本当は一緒に暮らすつもりだったんだ。でも、お袋の態度があれではねえ」
 波斗が困り顔。
 「嘘おっしゃい。一緒に暮らす気なんか始めからないくせに。私の態度がどうだって言うの。あの女の味方ばっかりするくせに。あなたなんか生まなければ良かった」
 美波が酔った勢いで、恨みつらみを一気に吐き出した。
 「よく言うよ。いつ道瑠の味方をした?」
 「まあまあ。波斗さん、言い分もあると思うけど。今日は先輩に言わさせて上げて。先輩は辛いのよ。つらくて辛くてしょうがないのよ」
 井本が二人の間の仲裁に入った。
 「おい、波斗。てめえは、あんなゲスな女に尻尾をぴょんぽこぴょんぽこ振りやがって。ああ、情けない。情けない。飼い犬に噛まれるとは。涙が出るよ。ウイっ」
 「先輩、それは言い過ぎですよ」
 「おい、井本。てめえは色気のかけらも無いくせに、何を偉そうな事を。偉そうな事を言う前に、波斗を手なずけてみろ。もっと、色っぽくなってみろ。ば~か」
 美波は酒をぐいぐい飲みながら言いたい放題。


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