マザー症候群

 「あら、嫌だわ。先輩、寝言を言ってる」
 井本と波斗が、顔を見合わせて笑い合った。
 (あれは、寝言か)
 (演技か)
 (どちらにしても先輩は必死なんだ)
 井本は、寝言でまで言う美波の辛い心の内をしみじみと味わっていた。
 「私、先輩を部屋に連れて行って寝かせて来ます」
 「お願いします」
 井本は美波を部屋に連れて行きベッドに寝かせた。
 美波は安らかな顔をして眠っているように見えた。
 「先輩、ここからは私のやり方でやらせて頂きます。精一杯やりますから、先輩も応援して下さいね」
 井本が美波の寝顔に話し掛けた。
 美波の反応は無かった。


 
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