マザー症候群
「ひとつ聞いてもいいですか」
と、神妙な顔で井本。
「どうぞ」
「先輩の寝言、どう思われます」
井本が波斗に質問をした。
「あれは、寝言かな。嘘臭いけど」
「私もどっちかなと。でも、どちらにしても先輩が願ったおられる事ですよね」
「そりゃそうですけど」
「私は大賛成なんですけど」
井本は波斗の反応を観察しながら積極的な発言をした。
波斗は黙ってウイスキーを舐めていた。
「私なら先輩とツーカーだし、嫁と姑の問題も無いと思います。それに、料理だって先輩から手ほどきを受けていますから。味付けは先日、体験された通りです。きっと、いい妻、いい嫁になってみせます。自信があります」
「ありがとう。そう言って頂いて。道瑠に会っていなければ、お袋の思い通りになったかもしれませんね。いや、きっとそうしたと思います。しかし・・・」
「しかし、何でしょうか」
井本、次の台詞に全神経を集中させた。