マザー症候群

 「辛い事情を正直に話して下さりありがとうございます。わかりました。波斗さんの事はきっぱりと諦めます。ああ、すっきりした」
 井本はさばさばした表情で、波斗の断りの意思を受け入れる事が出来た。
 「波斗さんて、素敵な男性ですね。私、惚れ直しました。もし、私が道瑠さんの立場だったら。涙が出るほど嬉しいですよね。波斗さんて、今の日本じゃ絶滅危惧種ですよね」
 井本はスカッとした半面、悔しい思いが込み上げて来た。
 (私、波斗さんが前以上に好きになったかも)
 井本が波斗の精悍な顔を見詰めて溜息を付いた。
 (出会うのが遅過ぎたか)
 (残念!)
 井本は、そんな気持ちを酒で癒し波斗との酒宴を終えた。


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