マザー症候群
朝。
美波は目覚めるや否や、井本のいる部屋に向かった。
「井本ちゃん、起きてる」
「あっ、はい」
と、寝起きまなこの井本。
「入るわよ」
「どうぞ」
美波が部屋に入ってきた。
「で、どうだった」
「駄目でした。波斗さんの意思は想像以上に固かったです。先輩、ご期待に応えられなくてすみません」
井本はその理由については語らなかった。波斗の口から美波に言った方が良いと思ったから。
「そう。駄目だったか。少し期待したけど。駄目だったのね。仕方がないわ。どうもお疲れ様」
美波は、言葉以上に落胆をした。いちるの望みが破れてしまったから。