マザー症候群

 「これで万策尽きたか」
 美波が心の中で呟いた。
 (波斗はあの女に奪われる)
 (ああ、気が狂いそう・・・)
 美波は井本がいなければ大声を上げて泣き叫びたい心境だった。
 井本が帰った。
 美波はその後、何もする気が起こらず夢遊病者のように。
 失意のうちに時が流れてゆく。。
 美波、気持ちが少し楽に。何故?と思ったら、目の前に焼酎の瓶があった。
 知らず知らずのうちに酒を飲んでいたのだ。
 「癒してくれたのは、お前か」
 「お前だけだよ。優しいのは」
 「ありがとうよ」
 美波が、焼酎の瓶に向かって礼を言った。


 
< 108 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop